とある幼なじみカップルのラブラブな日常
「あ、良かった!
次、入野さんの診察です、診察室へどうぞ?」
看護師が微笑み、診察室へ促す。

「はい」
《行こうか》

愛結が頷く。

そして診察室へ向かいながら、看護師が「入野さんに一人で診察するかちょうど聞いてたところなんですよ。良かった戻ってこられて(笑)」と微笑む。

すると大彌は「あ、一人でなんて絶対にダメなので、そんな時は後に回してもらっていいですよ」と淡々と答えた。

愛結は何の話をしているかわからなかったが、最後看護師の困ったような表情を見て、なんとなくどんな話をしていたのかわかった。

診察室の中でも、まるで愛結の保護者のように医師に愛結の病状を伝える。

大彌の過保護ぶりは、病院内でも有名。

医師や看護師はそれを十分にわかっているので、普通に対応をする。
「最近、手が荒れるみたいで……」

「うーん…
ちょっと見せてね」
愛結の手を優しく取る。

「これは、典型的な手荒れね。保湿薬も処方しておきますね。多めに出すから、面倒でも手を洗った後や、家事の後に塗るようにしてください。そうすれば、落ち着くと思います。
あと、ここの荒れてるところへの薬も出すから一緒に塗ってください。
これは、ステロイドは入ってない優しい薬なんだけど、このくらいなら十分治るはずなので。
一ヶ月分出すから、来月来た時に一緒に経過を見ますね。
それまでに万が一酷くなるようなら、すぐ来てください」

「わかりました」
医師に頷いて、愛結に《やっぱり、手荒れだって。薬塗ったら治るってさ》と伝える。

愛結は大きく頷いた。

診察を終え、会計をして薬をもらう。
そして漸く病院を出た。

《お腹すいたね。
何か食べて帰ろう?
何食べる?》

大彌問われ《暑いから、冷たい物がいい》と答えた、愛結。
スマホを操作し、店の情報を大彌に見せた。

「蕎麦か…」
《良いよ!
ここから近いね。
調べてたの?》

《病院行く日は、いつもお昼を食べて帰るから。
色々ピックアップしてるの》

大彌はふわりと笑って、愛結の頭を撫でた。

蕎麦店は満席で、待つことにした二人。
端の方に並んで立ち、スマホゲームを始めた大彌。
やっぱり愛結は、隣から見つめる。

ふと…大彌と愛結の隣にいたカップルを見ると、楽しそうに会話をしている。

「………」
愛結は、隣の大彌を切なく見上げた。
(私は、大彌とそんな風に出来ない)

こんな切ない想いをするのなら、弁当を買って帰り家で食べる方がいい。

愛結は大彌の服を掴み、キュッキュッと引っ張った。
「ん?」
《何?》

《やっぱり、お弁当買って家で食べよう?》

《え?
待つの疲れちゃった?》

(そうじゃなくて!)
首を横に振る、愛結。

すると「二名でお待ちの松富様〜」と呼ばれた。


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