とある幼なじみカップルのラブラブな日常
玄関先まで来て、愛結に《何かあったら、すぐ連絡して》と伝える。

頷きながら、愛結は切ない表情で僕を見上げている。

“行かないで”っていってよ。
そんな表情で見つめるのなら…早く結婚しようよ!

そしたらすぐにでも、在宅勤務に変更するのに……

《大丈夫?》
そう聞くと、必ず《大丈夫》と微笑む愛結。

絶対に“大丈夫”って、切なく笑う。
僕を安心させるように微笑んでるつもりだろうけど、僕から見れば“行かないで”って言ってるように見える。

はっきりいえばいいのに……

僕は心の中でため息をつき、別れを惜しむように愛結と自分の口唇をトントンと叩いた。

愛結とキスを交わし、小さく手を振って家を出た。


“普通”って、なんだろう―――――――

物心ついた時には既に愛結は僕の傍にいて、それからずっと一緒にいる僕達。

今はいわなくなったけど、愛結はよく“私は普通じゃない”といっていた。

だから僕は愛結に“耳が聞こえないのは、愛結の個性”と伝えている。

それは愛結への同情ではなく、本心だ。

最初から愛結は耳が聞こえず、コミュニケーション手段は手話。

それが“普通”だから。

しかし愛結は“何基準かわからない障がいを理由に”僕との結婚を拒否し続けている。


「――――俺、思ったんだけど…」
ランチ中。

僕と同じく、奥さんの作った弁当を食べながらオオウチくんが切り出した。

「何?」

「子ども作ったら?」

「は?」

「結婚!
したいんだろ?
こんな言い方、適切じゃないけど……
一番、手っ取り早い方法だろ?」

「それ、言ったことがある」

「あるんだ…(笑)
で?何て?」

「バカ!!って」

「バカ?(笑)」

「二人が愛し合って“子どもが出来て結婚する”のと“結婚するために”子どもを作るのは、全然意味が違うって。
子どもは、道具じゃないってさ」

「………ごもっともだな(笑)
でもさ。彼女、松富くんのことめっちゃ好きだよな(笑)」

「まぁね。
当たり前だよ。僕達は、相思相愛なんだから」

「この前のタクシーで同乗した時さ。
彼女、松富くんだけをジッと見てたもんなぁ〜」

「うん、視線は常に感じてる」

「松富くんの束縛、実は嬉しいんじゃね?(笑)」

ケラケラ笑うオオウチくん。
そう。
愛結は言葉では束縛を嫌がりながらも、僕に束縛されることをある意味喜んでいて、愛結自身も僕を束縛している。



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