神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
そんな私を、唯一優しく包んでくれたのは――母方の祖母だった。

「エミリア。あなたは将来、聖女になるのかもね」

そう言いながら、祖母は枯れた花にそっと手をかざした。

次の瞬間、しなびていた花びらがふわりと広がり、再び色を取り戻した。

「……おばあちゃんも、できるの?」

思わず私は声を上げた。

「ええ、あなたほどではないけどね」

そう微笑んだ祖母の瞳は、どこか遠くを見ていた。

後から聞いた話によれば、祖母の家系には代々、神の加護を受けた娘が生まれていたという。

けれど、聖女として表舞台に立つことはなかった。

なぜなら、その力を恐れられ、封じられてきたから。

「エミリア。いつか、あなたに信託が下されるわ。」

祖母は、私の小さな手をぎゅっと包み込んで言った。

「その時は、謹んでお受けするのよ。」

「……はい。」

幼い私は、ただ頷くしかできなかったけれど、祖母の声には確かな温もりと、なにか覚悟のようなものが滲んでいた。

私の力は、きっと偶然じゃなかった。

神様は、ずっと前から私を見ていたのだ――そう思えるようになったのは、この人がいてくれたから。
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