神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
そして、私が十八歳になった年の春。

村の空気がまだひんやりと冷たい朝、家の戸を叩く音が響いた。

開けた扉の向こうに立っていたのは、銀色の刺繍をほどこした衣をまとった、神殿の使いと名乗る人物だった。

「エミリア・セラフィーナという方はいらっしゃいますか。」

凛としたその声に、私は思わず姿勢を正した。

「……はい、私です。」

恐る恐る一歩前に出ると、使者は静かにうなずき、一枚の羊皮紙を差し出してきた。

「この度、貴殿は神託により、“聖女”として神殿に仕えられたく命ぜられました。」

の文字を見た瞬間、胸の奥が大きく跳ねた。

「えっ……私が、神殿に?」

声が震えていた。

私のような、村の片隅で暮らす平民の娘が。

あの、神に仕える聖なる場所に、立ち入ることなど許されるなんて。

それは、選ばれし者にだけ開かれる世界。

そう、祖母が言っていた“信託”が、ついに降りたのだ。
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