神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
それは紛れもない、レオ様の声だった。

――私は、そこで思考を止めた。

「……!」

その瞬間、扉の奥からクラリーチェ様の視線がこちらに突き刺さる。

まるで、そこに誰かが立っていることを知っていたかのように。

瞳が、赤く光った――気がした。

その殺気に、私は思わず身を引いた。

音を立てぬよう、足早にその場を離れる。

心臓が、苦しいほどに鳴っている。

鼓動が喉元まで迫り、息が詰まりそうだった。

「……見てしまった……」

扉の向こう、あのベッドで交わされているものは、愛――なのか?

それとも、力を得るための契約なのか。

分からない。でも、事実は残る。

レオ様は、クラリーチェ様を愛している。

私はその夜、一睡もできなかった。
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