神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
「でも……」

私はそっと視線を落とした。

レオ様のことを忘れようとしても、頭から離れない。

ならばせめて、舞踏会では――“誰か”として踊ろう。

ドレスの裾を持ち上げ、アニーに借りた靴でそっと一歩踏み出す。

「やっぱり私には、ダンスなんて似合わない……」

小さくつぶやいたその時だった。

「そんなことはありませんよ。」

ユリオの声がして、気づけば彼が私の手を取っていた。

「えっ……ユリオ?」

「こうして踊るんです。」

彼は私の手を引いて、自分の腰にそっと添えさせる。優しく、そして自然な動作で。

「一歩、二歩。……はい、そう。あとは、相手の男性にすべてを任せてください。」

彼の言葉に従って動くだけで、身体がふわりと音楽に乗ったようだった。

心地よい旋律と、穏やかなリード。

「……ユリオは行かないの?」

「行かないわけではありませんが――」

ユリオは少し目を細めて、意味ありげに微笑んだ。
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