神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
「美しいでしょう?」

その声は、静かで低く、まるで風が水面をなでるようだった。

「この神殿は、先々代の王が当時の聖女のために建てられたものです。王と聖女が手を取り、この国を救ったと――そんな言い伝えがあるんですよ」

私はその横顔を見上げた。

整った顔立ちに、どこか哀しげなまなざし。

それでも、優しさがにじむような空気をまとっていた。

「あなたが……聖女エミリア・セラフィーナ様ですね。」

男性は私に向き直り、深く頭を下げた。

「私はユリオ・グランゼルト。この神殿に仕える書記官であり、あなたの教育と補佐を任された者です。どうぞ、よろしくお願いいたします」

私は慌てて一礼する。

「よろしくお願いいたします、ユリオ様……」

「ユリオで構いません。もっとも、聖女様と呼ぶ方が形式上は正しいのですが……」

彼は、口元だけで少し笑った。
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