神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
私は頷き、馬車に乗り込んだ。

扉が閉じる音とともに、窓の外に両親の姿が遠ざかっていく。

私は唇を噛みしめ、胸元に手を当てた。

――行こう。神の導く先へ。

そして、私という存在が、たしかに“この地に生きていた”という証を、王都に刻もう。

どこかで、風がそっと揺れた。

祖母がまた、見守ってくれているような気がした。

王都に着くと、馬車はそのまま宮殿の横を通り抜け、厳かな神殿の前で止まった。

白を基調とした建物は清らかで、まるで雪の結晶のように繊細な彫刻が刻まれている。

金を基調とした華やかな王宮とは対照的で、静かに息を呑んだ。

「綺麗……」

思わず、声がこぼれた。

そのときだった。

私の隣に、いつの間にか誰かが立っていた。

白い法衣に身を包み、腰まで届く長い銀灰色の髪を一束に結った、神秘的な雰囲気の男性だった。
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