神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
私は背を向けたまま、きつく唇を噛む。

「こんな……」

胸がぎゅっと締めつけられた。

「惨めな気持ち、初めてよ。」

私の想いも、初めてだった。

恋なんて、自分には縁のないものだと思っていた。

でも、仮面の下で愛を囁かれ、肌を重ねたのは――よりにもよって、想いを断ち切るべき相手だった。

レオはそっと私の手を取り、甲に口づけを落とす。

「……もうこれきりにして。」

震える声で告げると、レオの瞳が悲しみに揺れる。

「一度きりにはしないと、誓ったんだ。」

「……恋したのは、間違いよ。」

私は首を振る。言い聞かせるように。

でもレオは、真っすぐに私を見て言った。

「間違いじゃない。――これは真実だ。」

その瞬間、レオは私を抱き寄せ、狂おしいほどの口づけを与えた。

唇を塞がれ、切なさも、怒りも、悲しみも、全部、彼の熱に溶かされていく。

「君の愛は、俺だけのものだ。」

その言葉が、耳の奥に焼きついた。

私は何も言わず、レオの腕からそっと抜け出した。

背を向け、ドアに手をかける。

そして、振り返らずに言った。

「さようなら、レオナルト様。」

音もなくドアを開き、私は朝の気配に包まれながら、静かに部屋を出た。
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