紳士な弁護士と偽りデートから
あかりは青ざめた。
一夜を明かしておきながら、特定な人がいた事実。
あかりはシャワーを浴びたかったが、そんな時間はなくて、匠が電話を済ませる前に、急いで身支度をして部屋をあとにした。
あの情熱な一夜はなんだったのだろうか。
騙された...。騙された! 騙された!!
あかりはホテルを後にし、街をふらふらと歩いていた。今日は土曜日だけあり、ありがたかった。こんなどん底な気持ちで、会社にはいけない。
だけど、わたしも悪かったのだ。あかりは自分に言い聞かせる。
匠の相手に申し訳ない気持ちが勝ってきた。
どんなつもりで、わたしと寝たのだろう? 付き合っていた頃も、ひょっとしたら他の女性と? そんな思いが巡ってくる。
「ああ! もう!」
あかりは声をあげるが、誰もが知らんぷりだ。都会でよかった。と、胸を撫で下ろした。
あかりは何事もなかったかのように、しゃんとして、歩き出した。
この複雑な思いをぶちまけるのは、あの場所しかない。
珍しく北欧風な作りで、チェーン店でなく、お洒落な喫茶店。
「相談に乗って!」
あかりは泣きそうになるのを堪えて言った。
「...ひとまず、何か頼む?」
いとこの一条茜音は、あかりの心情を察し、そう伝えた。
「ホットコーヒーと、ホットケーキ。メイプルシロップたっぷりで」
茜音は微笑むと、作り始める。髪が入らないようにお団子ヘアーにして、綺麗に纏めている。
カウンターの隅にいる50代の男性はすでに常連客で、配慮してか、ホットコーヒーとケーキを持って、席を移動しようとしたが、あかりは、
「坪平さん、大丈夫ですから」
と、手を振った。
「そうかね......? 悪いかなぁと......。本でも読んでるとしよう」
その男性は坪平周平と言い、スーツ姿でやって来ては、たまに休憩している。
カバンを持っているから営業マンだろうか。
あまり繊細に聞かないでいる。
坪平周平は本に集中しているものの、あまり聞いてはいけないような内容だった。やはり席を外した方がよかったのでは? と思うぐらいだ。
最後の一口、ケーキとコーヒーを飲み干し、
「ごちそう様。美味しかったよ」
と言って、会計を済ませて、この喫茶店から出て行った。
あかりは忘れようと、さらに仕事に集中して二週間。茜音の経営している喫茶店に向かった。
すると店は賑わっていて、茜音は忙しく働いていた。
「あー、あかり、ちょうどよかった! ちょっと手伝って!」
「う、うん!」
あかりはスタッフルームに入って、準備をする。準備が出来て、キッチンに立った。カウンター隅には、周平がコーヒーを飲んでいる。スーツ姿ではなくて、私服だ。
オーダーを取ったり、運んだりする。どうして、今日はこんなにも凄いのだろう。
忙しくしているものの、茜音は嬉しそうである。
ドアベルが鳴ると、あかりは笑顔で挨拶するが驚く。
匠だ!!
あかりはいそいそと、カウンターの奥に隠れるように引っ込む。
「凄く素敵ねー」
女性が嬉しそうに呟いた。
「なんかインスタで話題になったらしいよ」
匠が言う。
茜音が料理しながら、匠たちを誘導した。
少し姿を見なかった周平が、スタッフルームからやってきた。
あかりは周平のカフェ姿に見惚れた。
立ち振舞いは手慣れたもので、女性客だとその姿勢に見惚れる者までいる。
周平はさりげなく匠の席に行き、コップを置いた。
「ご注文がお決まりましたら、お呼び下さい」
ニコリと微笑む。
匠の連れの女性も、心なしか少し憧れの表情を見せる。周平はいわばイケオジ、というのに値するだろう。
もしお子さんがいて、周平似なら美男美女であろう。
あかりはふと、薬指をみると指輪を嵌めていた。二人とも同じ指輪。
あかりは青ざめた。結婚していたのだ。確か働いていた時はしていない!
なんて人! 完全に騙していたのね。
やはりあの時、帰ってしまえばよかった。
それにしても、可愛らしい奥様だ。なんて匠は罪深い人なのだろう。
可愛らしい奥様を見て、あかりは溜め息をついた。
一夜を明かしておきながら、特定な人がいた事実。
あかりはシャワーを浴びたかったが、そんな時間はなくて、匠が電話を済ませる前に、急いで身支度をして部屋をあとにした。
あの情熱な一夜はなんだったのだろうか。
騙された...。騙された! 騙された!!
あかりはホテルを後にし、街をふらふらと歩いていた。今日は土曜日だけあり、ありがたかった。こんなどん底な気持ちで、会社にはいけない。
だけど、わたしも悪かったのだ。あかりは自分に言い聞かせる。
匠の相手に申し訳ない気持ちが勝ってきた。
どんなつもりで、わたしと寝たのだろう? 付き合っていた頃も、ひょっとしたら他の女性と? そんな思いが巡ってくる。
「ああ! もう!」
あかりは声をあげるが、誰もが知らんぷりだ。都会でよかった。と、胸を撫で下ろした。
あかりは何事もなかったかのように、しゃんとして、歩き出した。
この複雑な思いをぶちまけるのは、あの場所しかない。
珍しく北欧風な作りで、チェーン店でなく、お洒落な喫茶店。
「相談に乗って!」
あかりは泣きそうになるのを堪えて言った。
「...ひとまず、何か頼む?」
いとこの一条茜音は、あかりの心情を察し、そう伝えた。
「ホットコーヒーと、ホットケーキ。メイプルシロップたっぷりで」
茜音は微笑むと、作り始める。髪が入らないようにお団子ヘアーにして、綺麗に纏めている。
カウンターの隅にいる50代の男性はすでに常連客で、配慮してか、ホットコーヒーとケーキを持って、席を移動しようとしたが、あかりは、
「坪平さん、大丈夫ですから」
と、手を振った。
「そうかね......? 悪いかなぁと......。本でも読んでるとしよう」
その男性は坪平周平と言い、スーツ姿でやって来ては、たまに休憩している。
カバンを持っているから営業マンだろうか。
あまり繊細に聞かないでいる。
坪平周平は本に集中しているものの、あまり聞いてはいけないような内容だった。やはり席を外した方がよかったのでは? と思うぐらいだ。
最後の一口、ケーキとコーヒーを飲み干し、
「ごちそう様。美味しかったよ」
と言って、会計を済ませて、この喫茶店から出て行った。
あかりは忘れようと、さらに仕事に集中して二週間。茜音の経営している喫茶店に向かった。
すると店は賑わっていて、茜音は忙しく働いていた。
「あー、あかり、ちょうどよかった! ちょっと手伝って!」
「う、うん!」
あかりはスタッフルームに入って、準備をする。準備が出来て、キッチンに立った。カウンター隅には、周平がコーヒーを飲んでいる。スーツ姿ではなくて、私服だ。
オーダーを取ったり、運んだりする。どうして、今日はこんなにも凄いのだろう。
忙しくしているものの、茜音は嬉しそうである。
ドアベルが鳴ると、あかりは笑顔で挨拶するが驚く。
匠だ!!
あかりはいそいそと、カウンターの奥に隠れるように引っ込む。
「凄く素敵ねー」
女性が嬉しそうに呟いた。
「なんかインスタで話題になったらしいよ」
匠が言う。
茜音が料理しながら、匠たちを誘導した。
少し姿を見なかった周平が、スタッフルームからやってきた。
あかりは周平のカフェ姿に見惚れた。
立ち振舞いは手慣れたもので、女性客だとその姿勢に見惚れる者までいる。
周平はさりげなく匠の席に行き、コップを置いた。
「ご注文がお決まりましたら、お呼び下さい」
ニコリと微笑む。
匠の連れの女性も、心なしか少し憧れの表情を見せる。周平はいわばイケオジ、というのに値するだろう。
もしお子さんがいて、周平似なら美男美女であろう。
あかりはふと、薬指をみると指輪を嵌めていた。二人とも同じ指輪。
あかりは青ざめた。結婚していたのだ。確か働いていた時はしていない!
なんて人! 完全に騙していたのね。
やはりあの時、帰ってしまえばよかった。
それにしても、可愛らしい奥様だ。なんて匠は罪深い人なのだろう。
可愛らしい奥様を見て、あかりは溜め息をついた。