紳士な弁護士と偽りデートから
常連客(イケオジ)の正体
経理の課長が、
「橘君、悪いけどこの書類を部長に渡してくれないか?」
と、あかりに渡してきた。
「......これを、ですか?」
「君は一生懸命だし、何しろ信用出来るよ。わたしはこれから会議があるから、すぐに渡せなくてね」
信用ですか。わたしにとっては痛いですね。あかりは匠との一夜を思い出して身震いした。
この書類と信用、何かあるのだろうか?
あかりは早速書類を、部長へと渡すために向かった。
部長室のドアをノックすると、
「どうぞ」
と言う声で、ドアを開ける。
「失礼します」
「え?」
その声で顔を上げた。
「あっ!」
あかりも声を上げる。
「つ、坪平さん......?! い、いいえ! 部長!?!?」
その椅子にはいつもいとこが経営している喫茶店で、のんびりしている周平の姿があった。
「いやいや! まさか、橘さん、この会社で働いていたのかね」
「え、ええっ!!」
あかりは嬉しくなって微笑んだ。
「経理の課長から書類を部長に渡すように頼まれまして」
「そうでしたか。いや、引っ掛かるところがあってね。ありがとう。いやー、嬉しいもんだね。コーヒーでも飲むかね」
「よ、よろしいのですか?」
「ええ」
周平はコーヒーを入れてくれた。
書類を読んで、
「うーん、やはり、営業部の方がおかしいかな」
と、コーヒーを飲みながら、独りごちた。
「な、何かあったのですか?」
「ちょっと計算が合わないみたいでね。その単位が少しずつ増えていくんだよ」
「え? 不正ですか」
「これ、内緒だけどね」
「は、はい」
何か出来ることはないだろうか、と、あかりは思った。
あかりはぼうっと、コーヒーを飲んでいると、
書類を読み終えた周平が、
「何かあったのかい?」
と、聞いてきた。
「不正の件、何か出来ないかと......」
「いやいや、その前から少し様子がなね......。その例の......?」
あかりは暫く沈黙をしてしまう。
「......実は、今日会う約束をされてしまって......」
「......強引だね」
「お、脅された形で......」
「なんてことだ。海都に連絡してみよう」
それから考えて、
「わたしに提案があるんだがいいかね」
と、話をしてきた。
「え?」
「橘さんの画像を頂いてよろしいですか」
あかりはわけが分からず、
「はあ?」
と、頷いた。
「海都はまだ、橘さんを見たことないので」
なんの提案だろうか?
周平はどうやら息子に、あかりの人物像を送ったようだ。
すると、あかりのスマホから電話が鳴る。知らない電話番号。
「それ、海都だから」
あかりは驚いて、電話を受ける。
《初めまして》
「は、初めまして」
緊張した。
《親父から少し、話は聞いてました》
透き通った声で、心地いい。
「す、すみません」
《大丈夫ですか。あまり緊張なさらないで》
「は、はぁー」
《待ち合わせはどうしましょうか》
突然過ぎてついていけない。
「え?」
《ほら、元彼がしつこいと言うので》
「え、えと。○○駅のカフェで待ち合わせをしていて.....」
《そうですか。随分な手口ですね。分かりました。それでは連絡します》
「は、はい」
《バッチは着けて行きませんから》
「そう......ですか」
どうしてだろうとは思ったが、深く追及はしなかった。
《それでは、また》
「よ、よろしくお願いします」
状況がよく飲み込めず、益々ぼうっとするあかりだ。
なんだかんだと、部屋から去り、一生懸命やっていたらお帰りの時間。
ピコンッ。
LINEの音にあかりは、
「ひゃっ」
と、飛び上がる。
「どうしたの?」
同僚の三隅華絵がその声に驚く。
「ご、ごめん。色々あったから」
「ふーん。それじゃ、お疲れ様」
華絵はぶっきらぼうに言って、早々と控え室へ去って行く。
さ、さようならー。なんて声は届かないか、なんて思うあかり。
華絵はちょっとハデな感じの人だが、仕事はバリバリこなせてしまう、あかりにとっては密かに憧れている存在だが。
ど、どっちかな?
あかりはそう思いながらスマホを見ると匠だった。
そうえばLINEは知らないのだ。
《今日予定入っちゃって、キャンセル》
......え?
脅しておいて、振り回す魂胆なのだ。あかりは既読にしただけだ。
あかりはスマホで海都に連絡をした。直ぐに出てくれた。
《キャンセルですか》
「はい......。なんだか、もうしわけなくて」
《でしたら、会いませんか?》
「橘君、悪いけどこの書類を部長に渡してくれないか?」
と、あかりに渡してきた。
「......これを、ですか?」
「君は一生懸命だし、何しろ信用出来るよ。わたしはこれから会議があるから、すぐに渡せなくてね」
信用ですか。わたしにとっては痛いですね。あかりは匠との一夜を思い出して身震いした。
この書類と信用、何かあるのだろうか?
あかりは早速書類を、部長へと渡すために向かった。
部長室のドアをノックすると、
「どうぞ」
と言う声で、ドアを開ける。
「失礼します」
「え?」
その声で顔を上げた。
「あっ!」
あかりも声を上げる。
「つ、坪平さん......?! い、いいえ! 部長!?!?」
その椅子にはいつもいとこが経営している喫茶店で、のんびりしている周平の姿があった。
「いやいや! まさか、橘さん、この会社で働いていたのかね」
「え、ええっ!!」
あかりは嬉しくなって微笑んだ。
「経理の課長から書類を部長に渡すように頼まれまして」
「そうでしたか。いや、引っ掛かるところがあってね。ありがとう。いやー、嬉しいもんだね。コーヒーでも飲むかね」
「よ、よろしいのですか?」
「ええ」
周平はコーヒーを入れてくれた。
書類を読んで、
「うーん、やはり、営業部の方がおかしいかな」
と、コーヒーを飲みながら、独りごちた。
「な、何かあったのですか?」
「ちょっと計算が合わないみたいでね。その単位が少しずつ増えていくんだよ」
「え? 不正ですか」
「これ、内緒だけどね」
「は、はい」
何か出来ることはないだろうか、と、あかりは思った。
あかりはぼうっと、コーヒーを飲んでいると、
書類を読み終えた周平が、
「何かあったのかい?」
と、聞いてきた。
「不正の件、何か出来ないかと......」
「いやいや、その前から少し様子がなね......。その例の......?」
あかりは暫く沈黙をしてしまう。
「......実は、今日会う約束をされてしまって......」
「......強引だね」
「お、脅された形で......」
「なんてことだ。海都に連絡してみよう」
それから考えて、
「わたしに提案があるんだがいいかね」
と、話をしてきた。
「え?」
「橘さんの画像を頂いてよろしいですか」
あかりはわけが分からず、
「はあ?」
と、頷いた。
「海都はまだ、橘さんを見たことないので」
なんの提案だろうか?
周平はどうやら息子に、あかりの人物像を送ったようだ。
すると、あかりのスマホから電話が鳴る。知らない電話番号。
「それ、海都だから」
あかりは驚いて、電話を受ける。
《初めまして》
「は、初めまして」
緊張した。
《親父から少し、話は聞いてました》
透き通った声で、心地いい。
「す、すみません」
《大丈夫ですか。あまり緊張なさらないで》
「は、はぁー」
《待ち合わせはどうしましょうか》
突然過ぎてついていけない。
「え?」
《ほら、元彼がしつこいと言うので》
「え、えと。○○駅のカフェで待ち合わせをしていて.....」
《そうですか。随分な手口ですね。分かりました。それでは連絡します》
「は、はい」
《バッチは着けて行きませんから》
「そう......ですか」
どうしてだろうとは思ったが、深く追及はしなかった。
《それでは、また》
「よ、よろしくお願いします」
状況がよく飲み込めず、益々ぼうっとするあかりだ。
なんだかんだと、部屋から去り、一生懸命やっていたらお帰りの時間。
ピコンッ。
LINEの音にあかりは、
「ひゃっ」
と、飛び上がる。
「どうしたの?」
同僚の三隅華絵がその声に驚く。
「ご、ごめん。色々あったから」
「ふーん。それじゃ、お疲れ様」
華絵はぶっきらぼうに言って、早々と控え室へ去って行く。
さ、さようならー。なんて声は届かないか、なんて思うあかり。
華絵はちょっとハデな感じの人だが、仕事はバリバリこなせてしまう、あかりにとっては密かに憧れている存在だが。
ど、どっちかな?
あかりはそう思いながらスマホを見ると匠だった。
そうえばLINEは知らないのだ。
《今日予定入っちゃって、キャンセル》
......え?
脅しておいて、振り回す魂胆なのだ。あかりは既読にしただけだ。
あかりはスマホで海都に連絡をした。直ぐに出てくれた。
《キャンセルですか》
「はい......。なんだか、もうしわけなくて」
《でしたら、会いませんか?》