影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
その言葉が嬉しくて、私はもう一度、彼を求めた。

ぎこちなく動きながらも、心だけは真っ直ぐに伝えたかった。

「こんなに溺れていいの?」

私は誠一郎さんの胸に手を添えながら、そっと問いかけた。

彼の体温が、私の掌からじんわりと心にまで染み込んでいく。

「俺はもう、梨沙に溺れてる。」

低く甘い声。そう囁いたあと、誠一郎さんはくるりと私の身体を包み込むように上になった。

「梨沙。」

「はい……」

私は彼を見つめ返す。視線が絡み合い、鼓動が高鳴る。

彼はゆっくりと抱きしめてくれた。

優しく、けれど決して離さないように強く。

「今夜は、特別な日だ。俺だけじゃなく、梨沙も……俺を愛してくれる。」

私はその腕の中で、彼の背中に手をまわした。

この温もりを、永遠に覚えていたいと思った。

「当たり前じゃない……私はあなたの——」

唇が触れる距離まで近づきながら、私は彼をまっすぐ見つめた。

「妻よ。」
< 119 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop