影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
泡が流れていくたびに、私は少しずつ、誰かの“妻”になるという実感を深めていく。

「君の背中も、流そうか。」

不意にそんなことを言われて、私はびくりとした。

「……え?」

「後ろ、向いて。」

優しくも逃げ場のない声に、私は言われるまま、そっと背を向けた。

すると、温かな泡が、私の背中をなぞるように広がっていく。

石鹸の香りとともに、くすぐったいような、恥ずかしいような感覚が肌を這う。

(こんなふうに……夫に触れられるなんて。)

「……ずっとこうして、じいさんばあさんになっても、一緒に背中を流し合いたいな。」

その言葉に、胸がふいに熱くなった。

(それって……ずっと私が、あなたの側にいてもいいということ?)

泡に包まれながら、私はそっと問わずにはいられなかった。

「……あの、誠一郎さん。前の方とも、こうして一緒に……お風呂に入られたこと、あるんですか?」
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