影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
誠一郎さんがそっと私の手を取る。

「君が黙っているから、不安なんじゃないかと思って。来てよかった」

その大きな手が、私の心の震えを静かに鎮めてくれた。

「ありがとう……ございます。」

その時、初めて本当の意味で思った。

(私……この人の妻になれて、よかった)

「はい、これ」

誠一郎さんが微笑みながら差し出したのは、淡いベージュ色の、美しい洋装だった。

「えっ……これ、私に?」

「うん。見た瞬間に“これがいい”と思って。」

広げてみると、裾に繊細なレースが縫い込まれた、柔らかなワンピース。

まるで春の陽射しを纏ったような、優しい色合い。

「綺麗……」

思わず、私は胸に手を当ててつぶやいた。

「ね、梨のような色だろう?」

「えっ?」

「君の名前――“梨子”に似合う服を、と思ってね。」

そう言われた瞬間、胸の奥がじんと熱くなった。

(梨子じゃないのに……)
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