影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
私は“梨沙”なのに――。

けれど、こんな風に名を呼ばれ、選ばれ、想ってもらえる日が来るなんて。

「バッグも買った。夢だって言ってたろ?」

差し出されたのは、艶やかなクリーム色の革製のハンドバッグ。

まさか――
あの日、町を歩いていた時、私が何気なく目を奪われていたもの。

「うそ……憶えていたんですか?」

「うん。君が一番長く見ていたからな。」

私は言葉を失った。

こんな風に想われるなんて、望んではいけなかったのに。

「でも……これ以上、たくさん頂いたら……お金もかかるし……」

「馬鹿なこと言うな。」

誠一郎さんは私の手をぐっと引いて、そっと抱きしめた。

「妻のために服を買って、何が悪い。」

「誠一郎さん……」

「君の笑顔が見られるなら、俺は何でもしたいんだよ。」

温かく、真っ直ぐな声。

「……梨子のために買うのが、楽しいんだ。」

その言葉が、胸の奥深くに沁みていった。

(ごめんなさい。本当の私は――)
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