影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「ええ。」

誠一郎さんは、私の手を握る力を少しだけ強めた。

だが私の中では、何かがひっかかっていた。

――まだ心のどこかに、その人がいるの?

あの人と来たこの街、あの人と見たこの風景。

(私は、代わりなのかな……)

ふと、誠一郎さんが振り返る。

「行こう、梨子。」

「……はい。」

私は微笑んだふりをして、誠一郎さんの腕にすがった。

でも――心の中では、小さな棘が刺さったままだった。

帰宅してすぐ、誠一郎さんは私を寝室に連れて行った。

扉が閉まると、何も言わずに私の唇を奪う。

「ふっ……」

口づけひとつで、私は全身が震える。

それだけで、彼を欲しくなってしまう身体になっていた。

帯を解かれ、肌が重なる。

熱が、心の奥にまで注がれていく。

それなのに――

「……どんな花を、買っていたんですか?」

ぽつりと、聞いてしまった。

嫉妬と不安が、抑えきれなかった。
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