影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「すまない。」

誠一郎さんの動きが、一瞬だけ止まった。

だが次の瞬間――激しさを増した。

「今は、梨子だけだ。前の人のことなんて、もう忘れた。」

「嘘……」

「君が忘れさせた。君が、俺を変えたんだ。」

「誠一郎さん……」

「君だけだ。」

そう囁かれた瞬間、私は何も言えなくなった。

ただ、彼の熱に身を委ねる。

「ああっ……!」

奥まで与えられる愛に、涙がにじむ。

――たとえ偽りの名前でも、今この瞬間は誠一郎さんの“妻”。

心も身体も、彼に満たされていく。

「もう、前の人を気にすることはない。」

そう言って、誠一郎さんは私を汗ばんだ胸に抱き寄せた。

心臓の鼓動が、すぐ耳元で聞こえる。

「いいね。」

低く、優しい声。私はこくりと頷いた。

「……はい。」

その答えが合図のように、彼の手が私の背を撫で、また熱く肌を重ねてくる。

「ああ、梨子……愛おしい……」

名前を呼ばれるたび、罪悪感と幸福が胸を刺す。
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