影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
本当は“梨沙”なのに。

それでも、今はこのぬくもりに包まれていたい。

「毎日君を抱く。」

誠一郎さんの言葉が、深く胸に届く。

私は泣きそうになるのをこらえながら、彼の背中に腕を回した。

「……私も、毎日抱かれたいです。」

そっと告げると、彼は微笑み、再び私を深く求めてきた。

それはまるで、過去を拭い去り、未来だけを見つめようとする愛だった。

ある日、私は庭先に誠一郎さんの姿を見つけた。

小さな火鉢の前で、ひとり静かに佇んでいる。

風が吹き、ぱちりと火がはぜた。

その中で、何かが燃えている。近づいて目を凝らすと――

写真だった。

若い女性が、可愛らしく笑っている。

その笑顔が、炎の中で静かに消えていく。

「誠一郎さん!」

私は思わず駆け寄り、傍にあった水差しを手に取って火にかけた。
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