影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
ある日の事。

私は、誠一郎さんの為にシャツを買おうと、仕立て屋さんに行こうとした。

その時ちょうど誠一郎さんが帰って来た。

まずい。誠一郎さんに内緒で買いたいのに。

「出かけるのか。」

ちょうど玄関を出ようとしたところで、誠一郎さんと鉢合わせた。シャツのプレゼントなんて、渡す時に驚かせたかったのに。

「いえ、一人で行けます。」

慌ててそう言うと、誠一郎さんは私をじっと見つめる。

「心配だ。君は美人だ。他の男に声を掛けられる。」

「えっ……そんなこと……」

「俺の妻だって知らずに声をかけてくる男がいたら……たぶん、殴る。」

「ええっ?」

「だからついて行く。」

そう言って、私の返事も聞かずに靴を履き始めた。

サプライズなんて、できるはずもない。

でも、どうしてだろう。

少し嬉しいと思ってしまう。

――こんなふうに、誰にも渡したくないって思ってくれるなんて。
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