影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
道を歩いていると、すれ違う男性が皆、なぜか私を避けて行く。

視線を感じて振り返ると、誠一郎さんが鋭い目つきで周囲を睨んでいた。

「誠一郎さん、皆を睨まないでください……」

「君に声を掛けようとする不届き者ばかりだ。」

「そんなことありません。」

「いや、目が狙っていた。」

どこの野生の動物ですか、と言いたくなったけれど、私は黙って歩を進める。

そのまま仕立て屋へ入ると、店主が気さくに声をかけてきた。

「おう、いらっしゃい。奥さん。今日はどんなシャツをお探しで?」

「こんにちは、今日は——」

「梨子の知り合いか。」

横から低く、誠一郎さんの声が割って入る。

その眼差しはまるで、決闘でも申し込むような鋭さだった。

「えっ……いや、私はただの仕立て屋で……」

店主が慌てて手を振る。

「誠一郎さん、やめてください!」

私は慌てて袖を引く。

店主が汗をぬぐいながら苦笑いしていた。
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