影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
そして、夜。

熱がぶり返し、私は悪夢の中へと引きずり込まれていった。

――さあ、そろそろ交代の時期よ。

あの声。姉の、梨子の声だ。

「待って……お願い、誠一郎さんを奪わないで……!」

――ばあやから聞いたわ。おまえがいい暮らししてるって。

「違う……これは私のものじゃない……でも……」

私はただ、愛されたかった。

誰かの隣に、居場所が欲しかった。

――愛されるなんて、おまえには似合わないわよ!

「いやあっ!」

重たい夢の中で、私は叫んだ。

身体が熱くて、苦しくて、涙がこぼれる。

そのとき――

ふいに、誰かの手が私の手を取った。

「梨子……」

あの優しい声に、私は縋るようにすがりたくなった。

けれど、次の瞬間、私は震えながら言った。

「梨子って……言わないで……」

その瞬間、布団がわずかに揺れ、体を覆っていた掛け布がずるりと剥がれ落ちた。

汗ばんだ肌が夜気に晒される。
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