影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
でもそれよりも、心が、すべてを暴かれたようで怖かった。

――もう、隠せないかもしれない。

“私”は、梨子じゃない。

でも、あの人に、ずっと隣にいてほしい。

翌朝、ぼんやりとまぶたを開けると、頭がずいぶんと軽くなっていた。

「あ……熱、下がった……」

私はゆっくりと上体を起こす。そしてふと横を見ると――

「え……」

ソファに座ったまま、スーツ姿で眠っている誠一郎さんがいた。

ネクタイはゆるめられ、ワイシャツの袖をまくり上げたまま、私の手を握っている。

「誠一郎さん……」

私は、胸がいっぱいになった。

こんなにも、大切にされている――それが、ただ嬉しかった。

そっと手を離そうとすると、その指がピクリと動く。

「……起きたか。」

ゆっくりとまぶたを開けて、誠一郎さんが微笑んだ。

「は、はい。あの、すみません。私のせいで徹夜を……」

私があわてて起き上がろうとすると、誠一郎さんが手を取った。
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