影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「すっきりしたか、ハニー?」

「はにー? ってなにー?」

私は誠一郎さんの額に触れながら、小首を傾げた。

すると彼は少し笑って、こう答えた。

「西洋ではね、妻のことを“はちみつの甘さ”に例えるんだよ。」

「はちみつ……」

思い浮かべたのは、あの金色にとろける甘い食べ物。

スプーンですくえば糸を引いて、口の中いっぱいに広がる濃厚な甘み。

「なるほど。じゃあ、旦那様は?」

「ダーリン、かな。」

「だーりん!」

私はくすくすと笑ってみせる。なんだかこそばゆい。

「親愛なる人、という意味だよ。」

「へぇ……」

誠一郎さんの語る姿に、私は改めてこの人の賢さを思い知る。

言葉に、知識に、そして愛に満ちた人――

そんな私の指に、彼がそっと自分の手を絡めた。

「ハニー。」

「……はい、だーりん?」
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