影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
そして数日後。
黒瀬家の応接間に、梨子と高嶋家の父が姿を現した。

「この度は、大変ご迷惑をおかけしました。」

梨子が深々と頭を下げた。

「実は、体調を崩してしまいまして……急遽、妹の梨沙に代わってもらったのです。」

まるで“すべては私の不始末”とでも言いたげな、作られた弱々しい声だった。

「まあ、そうだったの……」

黒瀬家の母が胸を撫でおろす。

「てっきり……とんでもない嘘だと……」

「でももう、すっかり回復しました。」

梨子が顔を上げる。

「これで、晴れて誠一郎さんの元へ嫁ぐことができます。」

その言葉に、黒瀬の両親は安堵の表情を浮かべた。

「よかった……やはり婚儀の相手は、高嶋梨子さんでなければ。」

だが――

この時、部屋の奥にいた誠一郎は、一言も言葉を発していなかった。
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