影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「旧軍人が、後妻を探している。」

父の言葉は、氷の刃のようだった。

一瞬、意味が分からなかった私は、ただ唖然と父の顔を見つめる。

「後妻……?」

嫌な予感が胸を締めつける。

それが的中したのは、次の瞬間だった。

「嫁ぐのはおまえだ。」

「……っ!」

「相手は、五十歳だ。だが、お元気でな。資産もある。申し分ない。」

「えっ……」

五十歳……。

もう父と同じくらいの年齢じゃないか。

「出戻りでも引き受けてくれるそうだ。」

出戻り……

そう言われた瞬間、胸の奥が裂ける音がした。

「……私は、出戻りじゃありません……誠一郎さんと……私は、まだ……」

「たんまり支度金も用意されている。」

父は私の言葉を無視して、淡々と続けた。

「どうせ、おまえにはそれしか価値はない。腹にいる子の父親も、はっきりしないのだろう?」
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