影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
――違う。

誠一郎さんの子だ。誠一郎さんだけが、私を抱いてくれた。

でも、誰も信じてくれない。

この家では、私はただの「妾の娘」で、「妾のような女」としてしか見られない。

「……所詮、お金……なんですね……」

気が付くと私は呟いていた。

父の目は冷たく、まるで感情がなかった。

「女はな、金になってなんぼだ。とくに、おまえのような“余りもの”はな。」

涙が止まらなかった。

でも、この涙の向こうに、きっと光がある。

私はそれを信じたい。

「そのお金、母に使ってくれますか?」

私の言葉に、父の眉がぴくりと動いた。

一瞬の沈黙のあと――

「ああ、いいだろう。」

「……お願いします。」

母だけでも、助けたかった。

この家に生まれてきた意味を、せめて最後に果たしたかった。

そうして私は、「後妻」として嫁ぐことが決まった。

相手は旧軍人――佐沼家。
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