影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
それは――思い切った決断だった。

けれど、あの夜――確かに、誠一郎さんの愛を、私の中に受け止めた。

今この身体に宿っているかもしれない、彼との命。

絶対に、絶対に守り切りたい。

そして、初夜――

私は、決められた寝所に通され、膝を正して布団へと入った。

やがて襖が開き、**佐沼 軍三郎(さぬま ぐんざぶろう)**さんが静かに入って来る。

布団の脇で一礼し、古武士のような所作で布団へと入ると、

厳かに、そして唐突に言った。

「――梨沙殿。いざ、お手合わせ申す。」

私は思わず、瞼を伏せた。

ここが命を守る場所になるなら――

私は、耐えてみせる。

誠一郎さんの子を、この命にかけて。

軍三郎さんの吐息が肌にかかる。

――生臭い。

いや、この匂い。獣のような、いや、年を経た肉体の匂い。

「はぁ、はぁ……」

しかも息が荒い。すぐ耳元で、それが聞こえる。
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