影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「……初めてではないんじゃろう。だが、まだ若い娘には酷だったか。」

軍三郎さんは、長い吐息を漏らした。

そして自ら布団をかぶると、背を向けた。

「無理に抱いても、わしの喜びにはならん。わしは、そういう趣味ではない。今日はもう、寝るぞ。」

私は動けなかった。

ただ、震える体を抱きしめるように膝を抱えて、静かに泣いた。

――守れた。

今夜は、誠一郎さんの子供を、守れた。

でも、明日は……?

私に、耐え続けるだけの強さがあるの?

それでも、諦められない。

誠一郎さんとの子供、そして……愛。

どんなことがあっても、私は――負けない。

「……お願い、抱いてください。」

その言葉が喉を通るまで、どれだけの勇気が要っただろう。

震える声でそう告げた私に、軍三郎さんはゆっくりと顔を綻ばせた。

「そうか……よいぞ、よいぞ。」
< 94 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop