悪 狐
「目を閉じろよ、そんな知識も無いのか?」
首を絞めていた手が顎を持ち上げ、見上げる私を嘲笑うように見つめる。
「……初めてなの。」
優しくして欲しいなんて言えず、色恋に疎い自分が幼く感じて涙ぐむ。
先生は目を伏せ気味にして、私の唇に舌を這わす。
唇を重ねた感覚のキスとは異なり、生々しいような柔らかさと滑り。
「イヤ、止めて。」
違う。
確かに求めていたけれど、こんな事じゃない。
「前に言ったはずだ。来る度に、屈辱を与えてやると……イライラする。その顔で俺を見るな。大内にでも、慰めてもらえばいい。」
突き放すように手が離れ、その場に座り込んだ私は体を覆う様に両手で抱き寄せた。
少しの震えが徐々に全身に伝わる感覚。
「何だ、許しが出たならもらって行こうかな。」
この声、大内先生?
視線を向けると、ドアに寄り掛かって笑顔を見せる。
いつから居たんだろうか。
先生は私の手を引いて立ち上がらせる。そして抱きしめ、背中や頭を優しく撫でた。
「相変わらず、悪趣味な奴だな。お前……」
保月先生は背を向けたまま、私たちの方を見ない。