小夜啼鳥
痛がるか笑うか、どちらかにしてくれないかな。
気持ち悪い。
「言葉の綾よ。あなたも知っている通り、私の家系は落ちぶれ、執事を雇うような余裕などない。それを、歴史とか由緒とか言われて……そもそも何故、キスしたの?」
何度か繰り返した主従関係の話。
それより気になるキスについて追求する方が、今は大事な気がする。
「今の関係を壊したくて。それは、君も同じだろ?」
今の関係を壊したいのは私も同じ。
確かにそうかもしれない。だけど、あなたの方法は私が望んだものと異なる。
初めてのキスを不本意な形で奪われてしまった。
それなのに心が痛まない。それは……
「そうね、壊れてしまった。私たちの関係が。幼馴染ではいられない。そして……あなたが望むような関係を私が願っていないから。」
彼に背を向け、私は拒絶を示す。
あなたは常に、私に対して優しい声をかけてきた。
それを受けて嬉しかったはずなのに、変わっていく関係が怖くて拒絶する。
「絶対に認めない。」
認めるわけにはいかない。
流されたりすれば私は…………
「黙って俺のものになれ。」
藤九郎は私を優しく抱き寄せ、抱きしめる腕の力を強めていく。
徐々に伝わる熱が増えていき、懐かしい香りに包まれて。
耳元で囁いた声は、いつもと違ってかすれていた。