小夜啼鳥
絞り出すような想いのこもった声音。
否定したくても、伝わる言葉に心は反応する。
足の力が抜けて彼の腕から離れ、廊下に座り込んでしまった。
冷たい床の温度も気にならない程、体温は上昇して心音が響く。
見上げた私に、藤九郎は優しい視線を注ぐ。
私の返事も聞いていないのに、満足そうな微笑み。
負けたような気がして、自分の抵抗が虚しく、思わず苦笑が出てしまう。
そんな様子を見て、藤九郎は私の両脇に手を入れ、軽々と持ち上げて立ち上がらせる。
真っ直ぐ見つめ、顔を近づけて額に軽いキス。
「好きだよ、七帆。出会った日から、ずっと。誰にも渡さない。幼き日から執事として仕えるなら、君の為に命を懸けようと父から学んできたんだ。君が気に入らないなら……ふっ。恋人になってあげても良いよ?」
とんだ上から目線。
だけど、それは執事を目指す前の、幼い頃のあなたと同じ。
私の心を奪った、初恋の思い出と変わってはいない。
優しい言葉も、意地悪な言葉も……
あなたの甘い声は変わらず、私への想いを告げる。
「好きよ、藤九郎……だけど執事は要らないわ。あなたは、私の為に命を懸けると誓った。それなら由緒も歴史も捨てて、私を恋人にしてくれるよね?」