小夜啼鳥
校舎に近づくと、心配していたのか疑っていたのか、藤九郎が待っていた。
少し不機嫌。
そんな嫉妬するような良い雰囲気など、少しも無いのに。
「あいつはあきらめてくれるかな?」
「私に失望したかもしれない。藤九郎、あなたは私に……それはないか。」
恋心から過剰な夢を私にみるような関係じゃない。
「何、俺が七帆に失望しない自信があるの?」
ないとは言わないけれど、それは。
「子供のころから、私をさらけ出してきたのに。今更、私は取り繕う事もしない。こんな私に失望するなら、もうとっくにここには居ないでしょ。」
藤九郎は優しく微笑んで、私を抱き寄せた。
八つ当たりして取り乱して、どんなに冷たく接しても、それでも好きだと言う物好き。
「趣味が悪いわね。」
「そうでもないよ。ねぇ、七帆。卑怯な君が俺に課した嘘。代価をもらってないんだけど、約束は守ってくれるよね?」
まだ有効なのかな、その約束は。
「嫌よ。思い出したけど、あなた腹黒よね。裏で何か企んでるでしょ。その嘘も利用したんじゃないの?」
幼き日の、嫌な思い出がよみがえる。
「ん?ふふっ……約束は、やぶる為にあるんだっけ?」
悪用を否定もせず、私の言葉を引用してきた。
『執事は時に、主人の為には手段を択ばない。』
幼き日、屋敷で働く大人たちが言っていたのを思い出す。
私は主じゃない。
だけど、そんな教育を受けてきた藤九郎が怖いのは。