奪う
「ミコトさんは、俺が死んだとしても悲しむようなことはなさそうですね」
彼の予想は見事に外れた。カナデから発せられた台詞は、まだ続いていた雑談であった。もう少し付き合う必要がありそうだ。彼は仕方なく会話を続けた。
「悲しまないのはカナデさんもじゃないですか」
「俺はめちゃくちゃ悲しみますよ。出会った時からずっとミコトさんに惚れてますので。惚れている相手が死んだら、俺もついていってしまうかもしれません。それくらい俺にはミコトさんが必要です。ミコトさん一筋なんですよ」
「すっかり口が温まってますね。カナデさんが飲んでいるのはホットコーヒーですか」
「とんでもないです。ミコトさんと同じアイスですよ。飲んでみますか?」
コーヒーの入ったカップを差し出された。彼は丁重に断り、カフェオレに口をつけた。
カナデは恐らく、嘘は言っていない。彼が死んだら悲しむことも、後追いすることも、事あるごとに口にする惚れたなんだの話も、冗談に聞こえるが内心は本気なのではないか。彼に詐欺を働く理由はないはずだ。
これでもし騙していたら、宣言通り殺せばいいだけである。甘言を弄する舌を引っこ抜いてぶっ殺せばいいだけである。引っこ抜いた舌は細切れにして口に流し込んでやればいいだけである。自分の血に溺れる姿を眺めた後に止めを刺してやればいいだけである。できれば、分厚い善人の皮を被らなくて済む貴重な人間にそのようなことはしたくないが、カナデが裏切った場合はやむを得ない。何が何でも殺すしかない。
カナデと違って、彼はカナデが死んだとて心が痛むことはなかった。悲しみに泣く自分の姿を想像できないのだった。感情はもう随分と前から壊れている。人を殺めることはやめられない。人の死に敏感な人間であれば、まず息をするように人を殺すことはしない。
彼の予想は見事に外れた。カナデから発せられた台詞は、まだ続いていた雑談であった。もう少し付き合う必要がありそうだ。彼は仕方なく会話を続けた。
「悲しまないのはカナデさんもじゃないですか」
「俺はめちゃくちゃ悲しみますよ。出会った時からずっとミコトさんに惚れてますので。惚れている相手が死んだら、俺もついていってしまうかもしれません。それくらい俺にはミコトさんが必要です。ミコトさん一筋なんですよ」
「すっかり口が温まってますね。カナデさんが飲んでいるのはホットコーヒーですか」
「とんでもないです。ミコトさんと同じアイスですよ。飲んでみますか?」
コーヒーの入ったカップを差し出された。彼は丁重に断り、カフェオレに口をつけた。
カナデは恐らく、嘘は言っていない。彼が死んだら悲しむことも、後追いすることも、事あるごとに口にする惚れたなんだの話も、冗談に聞こえるが内心は本気なのではないか。彼に詐欺を働く理由はないはずだ。
これでもし騙していたら、宣言通り殺せばいいだけである。甘言を弄する舌を引っこ抜いてぶっ殺せばいいだけである。引っこ抜いた舌は細切れにして口に流し込んでやればいいだけである。自分の血に溺れる姿を眺めた後に止めを刺してやればいいだけである。できれば、分厚い善人の皮を被らなくて済む貴重な人間にそのようなことはしたくないが、カナデが裏切った場合はやむを得ない。何が何でも殺すしかない。
カナデと違って、彼はカナデが死んだとて心が痛むことはなかった。悲しみに泣く自分の姿を想像できないのだった。感情はもう随分と前から壊れている。人を殺めることはやめられない。人の死に敏感な人間であれば、まず息をするように人を殺すことはしない。