奪う
「ミコトさん、来週の土曜日は休みですか?」
コーヒーを飲み、やけにゆっくりとカップを置いたカナデが、話題を切り替えるように口火を切った。途端に空気が変わった。カナデの口調に大きな変化はなかったが、場を取り巻いていた空気は確実に変わった。元々穏やかではなかったものが、更に穏やかではなくなった。カナデはぬるりと本題に入ったのだ。
彼はシフトを頭に思い浮かべた。休日は特に固定されていないが、回数として多いのは水曜日と土曜日であった。入院中の後輩のカバーのため、ところどころ変更はあったものの、来週の土曜日はオフのままだった。
「休みですね」
「良かったです。ミコトさんをお待たせしていますし、俺もあまりだらだら引き延ばしたくはないので、その日にしませんか?」
「いいですよ」
秒で決行日が確定する。雑談よりも遥かに短かったが、大事なのはここからである。どのようにして手を加えるのか。息の根を止めるのは彼の役目だとしても、ある程度の計画は熟考しておくべきだろう。行き当たりばったりで失敗したら洒落にならない。
以前のドライブの時、本来は予定になかったにも拘らず、カナデに煽られるがまま向かった先の心霊スポットで、偶然そこにいた四人を無事に殺せたのは、ただどちらかの運が良かっただけだと彼は思っていた。非常に快いひとときだったが、そう何度も上手くいくものでもあるまい。油断していると足を掬われる。殺しに行くのには慣れていても、彼は慎重に事を進めることを忘れなかった。慢心は、自分の首を絞める行為である。後輩を刺した男のように、感情的になることも、首を絞める行為である。殺すのなら冷静に殺した方がいいですよ、と逮捕された男に伝えたかったが、わざわざ口にする必要のない余計な一言であり、そのような発言をすることもまた、首を絞める行為であった。
コーヒーを飲み、やけにゆっくりとカップを置いたカナデが、話題を切り替えるように口火を切った。途端に空気が変わった。カナデの口調に大きな変化はなかったが、場を取り巻いていた空気は確実に変わった。元々穏やかではなかったものが、更に穏やかではなくなった。カナデはぬるりと本題に入ったのだ。
彼はシフトを頭に思い浮かべた。休日は特に固定されていないが、回数として多いのは水曜日と土曜日であった。入院中の後輩のカバーのため、ところどころ変更はあったものの、来週の土曜日はオフのままだった。
「休みですね」
「良かったです。ミコトさんをお待たせしていますし、俺もあまりだらだら引き延ばしたくはないので、その日にしませんか?」
「いいですよ」
秒で決行日が確定する。雑談よりも遥かに短かったが、大事なのはここからである。どのようにして手を加えるのか。息の根を止めるのは彼の役目だとしても、ある程度の計画は熟考しておくべきだろう。行き当たりばったりで失敗したら洒落にならない。
以前のドライブの時、本来は予定になかったにも拘らず、カナデに煽られるがまま向かった先の心霊スポットで、偶然そこにいた四人を無事に殺せたのは、ただどちらかの運が良かっただけだと彼は思っていた。非常に快いひとときだったが、そう何度も上手くいくものでもあるまい。油断していると足を掬われる。殺しに行くのには慣れていても、彼は慎重に事を進めることを忘れなかった。慢心は、自分の首を絞める行為である。後輩を刺した男のように、感情的になることも、首を絞める行為である。殺すのなら冷静に殺した方がいいですよ、と逮捕された男に伝えたかったが、わざわざ口にする必要のない余計な一言であり、そのような発言をすることもまた、首を絞める行為であった。