奪う
 本当にざっと一息に説明したカナデが、コーヒーを挟んだ。まるで他人事のような口振りからも、騙し続けていることに罪悪感はないことが窺える。彼が殺人をしても平然としていることと同じ心理だろうか。

 カナデは恋愛詐欺師である。詐欺の手口としては王道のように思えた。金蔓が大枚を叩いてくれたのは、アオイとのことは本気で、アオイを完全に信じ切っているからだろう。信用できない人間に大金を渡すとは思えない。今も付き合っているということからも、アオイの正体が詐欺師であることには気づいていないのかもしれない。恋愛感情を利用して詐欺を働くカナデの技量が卓越しているのか、金蔓が他人に利用されやすいタイプなのか。カナデの話だけで判断するのは難しいものの、それでもカナデが人を欺瞞することに長けていることは間違いないようだ。

「次はアオイの親友のイツキについて簡単に説明しますね」

 ひっそりとメモしたことをカナデに尋ねる必要もなく、カナデは彼が確認したかった次のステップへ進んだ。知らぬ間に与えられていた自分の役の解説が始まろうとしている。長々と話されるのは好きではないが、結託しているカナデとの会話には聞く耳を持たなければならないだろう。

 彼はカフェオレで口内を湿らせ、アオイの親友のイツキの情報を得ようと耳を傾けた。全ては最終目標である金蔓の殺害を成功させるためだった。

「イツキは、ミコトさんに演じてもらう可能性があることを考慮していましたので、演技をする負担ができるだけかからないようミコトさんと似たような性格にしておきました。クールで寡黙な性格の持ち主です。アオイの借金のことも知っています。親身になって相談に乗ってくれました。見かけによらず優しい人ですが、例えどんな事情があっても人に金を貸したり借りたりということには前向きではないので、アオイとイツキの間に金の貸し借りはありません。恋人のおかげで返済できたことをイツキには伝えていますので、知らないふりをする必要はないです。ざっとこんな感じでイメージ湧きますか?」
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