奪う
 ふと穴ぼこだらけのパズルが一気に埋まったような心地がした。彼は一息つくなりカフェオレを飲んだ。すっかり温くなっていたが、それでも美味いと感じた。全て飲み干した。アオイは恋人と上手くいってんだな。多分、これは違わない。

「ミーティングもこの辺にして、ちょっと一杯飲みませんか?」

 彼がカップを空にしたのを見計らったように、カナデが手で飲む仕草をした。カップの持ち方ではない。コーヒーやカフェオレではなく、酒を飲もうと誘われている。カナデもコーヒーを飲み干していた。

「飲むといっても、俺は車で来てますから飲めませんよ」

「うちに泊まれば無問題です。明日は仕事、何時からですか?」

「夜からなので、それまでゆっくりはできますが」

「ゆっくりできるのなら決まりですね。酎ハイですが持ってきます」

 有無を言わせない食い気味の口調で言い、空になった二つのカップを回収したカナデが台所へと向かった。

 カップを流しで手際よく洗ってから冷蔵庫を開け、二本の缶を取り出す。それから、ついでとばかりにつまみまで手にして戻ってくる。つまみはあたりめであった。

 カナデに缶のパッケージを見せられた。どちらの味がいいか尋ねられ、パッと目が合ったものを選んだ。キウイだった。もう一つはぶどう。

「キウイ好きなんですか?」

「目が合ったので」

「俺も目が合うだけでミコトさんのものになれるような人生を歩みたかったです」

「コーヒーにアルコールでも含まれてましたか」

「こう見えてめちゃくちゃ素面ですよ」

 言いながら、カナデが缶の蓋を開けた。軽快な音がした。しかしまだ口をつけることはしなかった。
< 147 / 175 >

この作品をシェア

pagetop