奪う
◇
「店長、長い間たくさん迷惑かけてすみませんでした。今日からバリバリ働きますので、よろしくお願いします」
何かしらの効果音がつきそうなほどに勢いよく腰を折る後輩を、彼はレジに立って無表情で観察していた。夕方のシフトに入っていた従業員と交代したばかりであった。
「迷惑だなんて思ってないよ。無事に元気になってくれて良かった。それよりシフトは深夜のままで大丈夫? 不安だったら変更もできるよ」
「大丈夫です。頼りになる先輩がいますし」
頭を上げた後輩がちらと彼を見て屈託なく笑った。店長も彼に目を向け、なぜか微笑ましそうに表情を緩めた。彼はふいと顔を逸らす。あまり頼りにしてほしくはないのが正直な気持ちだが、客観的に見ると、頼りにされてしまいそうな行動を取ってしまっていることは否めないだろうか。
「何かちょっとでも身体に異変があったらすぐに連絡してね」
「はい。ありがとうございます」
「うん。じゃあ、僕は先に帰らせてもらうね」
「お疲れ様でした」
店長は去り際に再度彼を見て、よろしくね、と完全に信頼しきっているかのように後輩のことを彼に任せ、店を後にした。
店長を見送った後輩が、満面の笑みでとことこと近づいてくる。刺された時に手を施したことで更に懐かれてしまったようだ。
「先輩またよろしくお願いします」
後輩が彼に対しても勢いよく頭を下げた。旋毛を目にした。累計四回目である。後輩の旋毛は二回目である。彼は返事もせずに流した。尻尾をブンブン振り回している後輩が隣でワンワン鳴き始めた。
「先輩は相変わらずっすね。安心したっす。入院中もその冷たさがずっとほしかったところあるんすけど、先輩全然来てくれなかったじゃないっすか。普通に寂しかったっす。会いたかったんすよマジで。助けてくれたお礼だって言いたかったのに、言えないまま退院しちゃったじゃないっすか」
「店長、長い間たくさん迷惑かけてすみませんでした。今日からバリバリ働きますので、よろしくお願いします」
何かしらの効果音がつきそうなほどに勢いよく腰を折る後輩を、彼はレジに立って無表情で観察していた。夕方のシフトに入っていた従業員と交代したばかりであった。
「迷惑だなんて思ってないよ。無事に元気になってくれて良かった。それよりシフトは深夜のままで大丈夫? 不安だったら変更もできるよ」
「大丈夫です。頼りになる先輩がいますし」
頭を上げた後輩がちらと彼を見て屈託なく笑った。店長も彼に目を向け、なぜか微笑ましそうに表情を緩めた。彼はふいと顔を逸らす。あまり頼りにしてほしくはないのが正直な気持ちだが、客観的に見ると、頼りにされてしまいそうな行動を取ってしまっていることは否めないだろうか。
「何かちょっとでも身体に異変があったらすぐに連絡してね」
「はい。ありがとうございます」
「うん。じゃあ、僕は先に帰らせてもらうね」
「お疲れ様でした」
店長は去り際に再度彼を見て、よろしくね、と完全に信頼しきっているかのように後輩のことを彼に任せ、店を後にした。
店長を見送った後輩が、満面の笑みでとことこと近づいてくる。刺された時に手を施したことで更に懐かれてしまったようだ。
「先輩またよろしくお願いします」
後輩が彼に対しても勢いよく頭を下げた。旋毛を目にした。累計四回目である。後輩の旋毛は二回目である。彼は返事もせずに流した。尻尾をブンブン振り回している後輩が隣でワンワン鳴き始めた。
「先輩は相変わらずっすね。安心したっす。入院中もその冷たさがずっとほしかったところあるんすけど、先輩全然来てくれなかったじゃないっすか。普通に寂しかったっす。会いたかったんすよマジで。助けてくれたお礼だって言いたかったのに、言えないまま退院しちゃったじゃないっすか」