売られた少女はクールな闇医者に愛される

眠る雪菜の側で、垂井 冬弥(たるい とうや)は絵を描く。色鉛筆で絵を描くのが趣味だ。絵の具は片付けが面倒なので使わない。風景画だったり、人物だったり、物だったり、その時描きたいものを適当に描く。今は部屋に飾ってあるガーベラを書いている。雅人の妻である桜(さくら)が飾ってくれた。

トントンと扉がノックされて、雅人が入ってきた。

冬弥は手を止めて、正座をして、頭を下げる。

隣にドンと雅人が座り、冬弥に言う。

「そんな堅苦しくしなくていいぞ。」

その言葉で冬弥は頭をあげ、足を崩した。

冬弥は3歳の時に、雅人の父で組長である大介(だいすけ)に拾われた。4歳年上の雅人や2歳年上の真也と共に育てられた。幼い頃は立場などよく分かっていなかったため、喧嘩なんかもしていたが、今は若頭、側近に対して組員として立場をわきまえている。

ただ、オフの時間は雅人や真也が昔のように接してほしいと言ってくれるので、兄貴のように接している。

冬弥は雅人や真也と共に極道について学んできた。組織論や交渉術、武力、情報収集のためのセキュリティ能力、極道にも多くのスキルが求められる。

冬弥は頭がよく、器用であるため、それなりにこなせていたが、雅人や真也のように自分に向いていると感じれるものはなかった。こなすだけであまり興味がわかない。
ただ、冬弥は京極組に医者として雇われている者の医術を見ることは好きだった。怪我した者がでる度に、呼ばれてやってきていた。
珍しく興味を示していたのが医術だったので、学ぶのはどうかと大介に提案され、闇医者の元、修行を重ねた。

医術を学ぶのは楽しかった。初めて自ら興味がわいた。そして鍛錬を重ねて、みるみる上達し、今ではかなりの医術を身に付けている。京極組では怪我をすれば冬弥の所には日常になっていた。

そして若頭に雅人が就任した際、絵のうまさと、医術を買われ、刺青を背中に彫った。
真也の刺青も冬弥がいれている。
今では冬弥に刺青を入れて欲しいという組員はかなり多い。