売られた少女はクールな闇医者に愛される
「ありがとうございます。」

「あー。」

酸素マスクをつけたまま、雪菜は細い声で感謝を述べる。

お医者さんなのだろうか·····
見るからに若いし、白衣なんて着ておらず、黒の半袖Tシャツに無地のレーヨン生地のステテコを履いている。

怖そうに見えるが、行動は優しい。
苦しい時、側で支えてくれた。

「あの·····あなたはお医者さんですか?ここは病院なのですか?」

雪菜は不安げに尋ねる。

「俺は医者じゃねーよ。医師免許なんて持ってねぇし。だけどまぁやり方わかるからやっただけ。若から命令されてなかったら、助けてないね。
ここは京極組の組長の家だ。」



雪菜の顔が明らかに青白く怯えたのがわかる。

「ここはその·····なんて言うか·····ヤクザの家ってことですか??」

「そうだね。世間ではそう言われてる家だ。」


雪菜は震える体を両手で抱きしめながら、

「すみません。すみません。寝てて、咳して、申し訳ございません商品なのに、おもちゃなのにお手間をおかけしてすみません。」

そう言いながら、地べたで正座しなきゃと焦る。
橋本組では上手く出来なかった時は何度も土下座させられた。
早くやらないとと思うが、ベットの上で体を起こすだけで苦しくなる。

雪菜の明らかに恐怖に飲まれる反応に、さすがの冬弥も驚く。

「体調悪い時は寝てろ。」

冬弥はそう言って起き上がってきた雪菜の肩を支えて横にさせようとする。


冬弥に触られて、雪菜はピクっと反応する。

「おもちゃとしてやらなきゃですよね。もう咳はしませんから。」

寝かされるということはおかされるということだ。玩具は体調なんて、関係ないと、咳する度に怒鳴られ、やられた。
ちゃんとしないと抵抗なんてしたら、どんな罰を受けるかわからない。
震える手で雪菜は服を脱ごうとする。


「何してる!!まだ絶対安静だ。さっき発作起こしたばかりだろ!」


冬弥は思いかげない雪菜の行動を止めるため、手を掴んで言う。

「ごめん·····なさい·····ごめんなさい·····ハーハーハー」


間違えてしまった……
冬弥の少し大きな声に雪菜は反省と恐怖心を抱き、呼吸が浅くなっていく……。


喘息ではないが過度な緊張から過呼吸を起こす。
弱った体に過呼吸は喘息を増悪しかねない。

「息吐くことに集中して、ハーハー」

冬弥は背中を擦りながら、吐くことをを促す。


苦しい·····怖い……どうしよ·····
ちゃんとしないと思えば思うほど、上手くいかない。雪菜は完全にパニックになる。

「ハーハッハッハッッッッッーーー」

「落ち着け。大丈夫だから!」

冬弥は声をかけ、背中をさすり続ける。
雪菜の骨と皮膚しかない背中が空気を求めて激しく上下する。か弱い背中が坂本組での日常がどんなけ悲惨なものだったかを物語っていた。

冬弥の呼び掛けも虚しく、雪菜はまた意識を手放した。
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