売られた少女はクールな闇医者に愛される
雪菜が目を開けると、またあの若い男が座っていた。
フローリングの6帖ほどの部屋に雪菜が眠るベッドが置いてあり、シャワー室が小さくついている。
薬がいくつか置いてあるが、白を基調とした殺風景な部屋だ。

男も雪菜が目覚めたことに気づいたようで、目が合う。

雪菜が慌てて起き上がろうとすると、寝たままでいいと言われる。

「体調どうか?呼吸苦しいよな。」

「いえ·····大丈夫です。」

本当は少し苦しいが、苦しいなんて言って、手を煩わせてはいけない。少しでも早く治さないと、怒られてしまう。

「本当は苦しいだろ。無理なんてしなくていい。」

そう言って少し、背もたれをあげて、吸入薬をシュッといれてくれる。

薬の影響で呼吸が楽になる。

「ありがとうございます。」

雪菜は不安げな表情で礼を言う。

「ここは橋本組とは違う。襲われることはないし、無理やり食べさせたりもしない。しんどかったり辛ければ口に出していい。できる範囲で対応する。今は元気になることだけ考えるんだ。」

冬弥の言葉に少し驚いた表情を浮かべる。

「どうした??」
冬弥は雪菜の表情から尋ねる。

「あっいや·····ありがとうございます。」

「ああ。」

冬弥はそう言って、またスケッチを始めた。今日は窓から見える空の景色を描く。
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