世界でいちばん長い夜
 改めて考えると、今日の私は本当に大胆な行動を取ったものだ。
 振られることを前提に酔った勢いであんなことを口にしたにもかかわらず、土屋さんはそれを受け入れてこうして土屋さんの部屋にいる。
 私にとってこれは奇跡としか言いようがない。

 私は酔いも手伝って、顔が熱くなる。
 土屋さんから借りている服もサイズが大きくて、Tシャツはミニ丈のワンピースみたいだし、クオーターパンツだって、私が穿けばハーフパンツの丈になる。

「あのっ、本当に今さらなんですけど……、ご迷惑じゃなかったですか……?」

 先ほどと同じくらいの勇気を振り絞り、私はようやく口を開いた。
 緊張のあまり、声は裏返っている。

 私の緊張で、手にしている缶酎ハイを握りつぶしてしまうのではないかと思うくらい力が入るけれど、プルタブを開けているからそんな事をすると中身がこぼれてしまう。

「迷惑だったらお持ち帰りなんてしないけど? それに、俺、藤田さんのこと、ずっと気になっていた」

 思いがけない返事に、私は目を丸くする。
 私のことが気になっていたって……

 私が驚いて口をパクパクさせていると、土屋さんは優しく私の頭を撫でた。

「みんな、俺の見た目で言い寄ってくるから、告白されても全然嬉しくないし、逆に迷惑に思っていた。けれど……、藤田さんからの告白、めちゃくちゃ嬉しかった」

 そう言って、土屋さんは私の顔を覗き込む。

「俺が異動してきた日のこと、覚えてる?」

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