彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました

4.塚本さん

「この家を、シェアハウスに?」

 いつもの何倍も長く感じた一日を終え帰宅した私は、母に雨宮先生に言われたことを話してみた。

「そう。職場の先生が言ったの。その気があれば相談に乗る、とも。たしかに不動産関係に強い先生ではあるんだけど、でも、冗談かも。だって無理だもん、私が一人で運営するなんて。それに先生、この家のこと何も知らないし」

 きっと母も同じ意見だろうと思ったのだ。
 シェアハウスに私が乗り気なわけじゃない。ただ、反対してもらえたら――やめる口実にできると思っただけ。
 ところが。

「いいんじゃない?」

 母は微笑んだ。

「え? でも、難しいよ。家を片付けたり、住んでくれる人を探したり……審査だってしないとだし」

 母が笑う。

「家の片づけは、どっちみちするでしょう。シェアハウスにしないなら、出て行くんだから」

 それもそうか……。
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