彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
私が派遣社員を選んだのは、司書を目指すためだ。
図書館で働くのは、小さい頃からの夢。けれど正職員の司書は狭き門。試験に落ち続けて、もう五年。倍率が高すぎて、あと一歩のところで及ばない。本当に司書になれるのか、わからなくなってきた。だったら派遣社員ではなく正社員になった方がいいのだし、それならこの事務所で正社員に登用してもらうのが一番だ。
そのためには、普段から正社員が面倒がる仕事を引き受けて、ポイントを積み重ねていくことが必要だろう。
「わかりました。いいですよ」
「ありがとうございます!」
香奈ちゃんの顔がぱっと華やいだ。
午後六時十分。
「お疲れさまー」
「また来週」
「野崎さん、すみません! 雨宮先生のこと、よろしくお願いしまーす!」
帰宅準備を終えたみんなが次々にオフィスを出て行く中、受付からの電話が鳴った。
「はい、野崎です」
「受付です。東洋不動産様、三名、いらっしゃいました」
「わかりました。ご連絡ありがとうございました」
私は急いで席を立つと、ロの字型のフロアのちょうど反対側にある雨宮先生の執務室に向かった。
ドアをノックする。
「はい、どうぞ」
少し低めで、落ち着いた声。
開けると、雨宮先生はすごい速さでパソコンのキーを叩いていた手を止め、私を見た。
図書館で働くのは、小さい頃からの夢。けれど正職員の司書は狭き門。試験に落ち続けて、もう五年。倍率が高すぎて、あと一歩のところで及ばない。本当に司書になれるのか、わからなくなってきた。だったら派遣社員ではなく正社員になった方がいいのだし、それならこの事務所で正社員に登用してもらうのが一番だ。
そのためには、普段から正社員が面倒がる仕事を引き受けて、ポイントを積み重ねていくことが必要だろう。
「わかりました。いいですよ」
「ありがとうございます!」
香奈ちゃんの顔がぱっと華やいだ。
午後六時十分。
「お疲れさまー」
「また来週」
「野崎さん、すみません! 雨宮先生のこと、よろしくお願いしまーす!」
帰宅準備を終えたみんなが次々にオフィスを出て行く中、受付からの電話が鳴った。
「はい、野崎です」
「受付です。東洋不動産様、三名、いらっしゃいました」
「わかりました。ご連絡ありがとうございました」
私は急いで席を立つと、ロの字型のフロアのちょうど反対側にある雨宮先生の執務室に向かった。
ドアをノックする。
「はい、どうぞ」
少し低めで、落ち着いた声。
開けると、雨宮先生はすごい速さでパソコンのキーを叩いていた手を止め、私を見た。