彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
 そう思いつつも、自分で最初からシェアハウス運営を考えていく、というのは、おもしろそうでもあり、私は、ちょっとわくわくしている自分にも気づいた。
 シェアハウスについては塚本さんも「わくわくする」と言っていたし、これはいい兆候かもしれない。

 頑張ってみよう。

 私はカウンターで貸出手続きを済ませ、雨宮先生に丁重にお礼を言った。

「先生、貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。頑張ってみます」
「おう。じゃ、また」

 先生は最後に少しだけ笑みを見せ、執務室のある方向へ去って行った。
 私は自席に戻ると、改めてじっくりと、雨宮先生が選んでくれた本の表紙を眺めた。

『初めてのシェアハウス』『シェアハウスQ&A』『基本・賃貸契約』『不動産の基礎』『賃貸オーナーの心構え』――雨宮先生は、検索もせずに素早くこれらの本を見つけてくれた。もしかして雨宮先生は、事前に調べてくれていたのだろうか。

 激務の合間に?
 そう思うと、改めて感謝の気持ちが湧き上がってきて、私は先生にメールを書いた。

『雨宮先生
 本、今から読んでみます。頑張ります。
 私のために時間を割いてくださり、本当にありがとうございます。
 野崎莉々』


 






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