彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
 私は、雨宮先生に家の中を案内した。

 玄関を上がると、小さなホール。ドアを開けると正面にキッチン、キッチンの左手にダイニング、その手前にリビングが続く。リビングの右手には玄関ホール、左手には十七畳ほどの父の書斎がそのまま残してある。これが一階。

「ルームシェアを始めたら、私が父の書斎に住もうと思っています」

 十七畳あれば、広さは十分だろう。

「風呂場や洗濯などの水回りは、ダイニングの隣か。そこに階段も――いい間取りだな」 
「ありがとうございます」

 雨宮先生に褒められて、素直に嬉しかった。
 父が設計した大好きな家。やっぱり出て行くのは嫌だ。

「二階は?」
「八畳間が四つにトイレ、ベランダです」
「広いな」

 二階に上がると、玄関側の二部屋のドアを順番に開け、先生に見せた。空き部屋で、今は母の引っ越し荷物を詰めた段ボールや、使っていない家具なんかが置いてある。

「で、反対側が母と私の部屋です」

 私は、ドアを開けるのを躊躇した。一応片付けたとはいえ、プライベートな空間を先生に見せるのは気が引ける。でもやっぱり、見てもらった方がいいよな――。
 思い切って、自分の部屋のドアを開けた。緊張しながらも、説明をする。

「庭がとてもきれいに見えるので、私も母も、こちら側に」
「たしかに、いいな」

 すぐ横に立つ雨宮先生を見ると、先生の視線は窓の先にあった。

「あの木、何ていうんだっけ?」
「ハナミズキです」
「きれいだ」

 今ちょうど、花盛りだ。

「庭も、見ます?」
「ああ」
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