彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました

7.契約書、完成

 私は締め切りに向けてせっせと本を読んだ。専門家のブログやQ&Aサイトもくまなく調べた。そして何とか契約書を仕上げた。

 契約書ができたら入居者の募集だ。そうなれば母はこの家から出て行く。でも、私は作業の手を止めることはできなかった。

 雨宮先生の親切に報いたいという気持ちもあったし、さらには、何かに夢中になっていないと怜士のことを思い出して辛くなるからだ。

 やっぱり、まだ引きずっている。思い出すたび、胸の奥が詰まるような気がする。
 あれ以来、怜士から連絡はない。
 だけど、エレベーターやお手洗いで香奈ちゃんが恋人の自慢話をする現場に遭遇するた、自分が怜士を取られたということを、嫌と言うほど実感させられる。
 その悔しさ、虚しさ、嫉妬、悲しみが、そのまま机に向かう力になっていた。

 そしていよいよ迎えた、締め切りの日。

「ちょっと遅くなるけど、いい?」

 指定された午後七時。私は先生の執務室に契約書を持って訪ねた。
 十ページにわたる契約書を読んでいく先生の視線は速く鋭く、いかにもプロという感じだ。私は緊張しながら、先生の机の前に置かれた椅子に座ってコメントを待った。
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