彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
「じゃ、また何かご馳走して――ああそうだ、月一回の夕食会の初回によんで。そうしたら、入居者がどんな人たちかも見られるし」
「いいんですか、そんなので」
「いいよ。おにぎりもサンドイッチも旨かった。次は何かな」

 先生はぽんと契約書を机に置き、頭の後ろで腕を組んで笑った。
 今日の先生はワイシャツにネクタイだけど、その堅い格好でこういう動作、アンバランスでリラックスしていて、私も自然と笑顔になった。

「承知しました。是非ご招待させてください」
「おう」
「じゃあ、これで失礼します。本当にありがとうございました」

 私は深々とお辞儀をして、先生の執務室を出た。
 気分は上々だ。
 だが。

「あれ? 野崎さん。何してたんですか? 雨宮先生のお部屋で」

 ドアのすぐ外で香奈ちゃんに出くわし、背筋がひやりと冷える。
 どうしてここに? 定時に元気よく挨拶して、オフィスを出て行ったはず――。

「スマホ忘れて、戻ってきたんです。ああ、やっちゃった―って思ったけど、戻ってきて良かったかも。なんだか私、おもしろい現場に遭遇しちゃったみたい」

 香奈ちゃんは含みのある笑いをし、私は嫌な気持ちになった。
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