彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
「う……」

 しまった、と思った時には、嗚咽まで漏れる。

 私の左横にいる雨宮先生は気まずかったのだろう、「――じゃあ俺、そろそろ帰るよ」と席を立った。
 ご挨拶してお見送りをしなくちゃ――私も焦って立ち上がろうとすると、目の前に差し出されたのはハンカチだ。

「――すみません」

 涙を拭くと、

「いや。色々と大変だったのに、よく頑張ったな」

 色々? もしかして先生、怜士と香奈ちゃんとのこと、知ってる?
 私の考えていることが伝わったのだろう、先生は、「前澤さんは声が大きいので。なんとなく彼女のしたことはわかった」とだけ言うと、この間と同じように、私の手からハンカチを取った。

「すみません、洗って返します」
「いいよ。またおにぎりで」

 先生が笑う。

「――具は、何が好きですか」
「具? そうだなあ、何でも好きだけど――この間の昆布の佃煮とチーズみたいな、意外性のあるやつがいいかな。野崎さんらしくて」
「わかりました。色々オリジナルの組み合わせあるんで、是非食べてください。受け渡しはルーフガーデンでいいですか」
「ああ、それがいい。よろしく」

 先生がまた笑い、私も笑った。
 
 こうして、シェアハウスの情報は、翌日公開された。
 そして、塚本さんをはじめとする複数の入居希望者から、申し込み希望が寄せられた。
 雨宮先生に報告すると、「やったな」とだけ、メッセージが返ってきた。
 短かったけれど、すごく嬉しかった。












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