彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
「ええ? いいですそんな、申し訳ないです!」
「いいよ、別に。乗りかかった舟だ。ここで手を離すの、中途半端でむずむずする」
「でも平日はお仕事で大変なのに、お休みまで私のことで手を煩わせるのは――」
「それは全然、気にしなくていい。気分転換になるし」
「気分転換?」
「そ。俺、いつも書類とパソコンとにらめっこだろ。休みも、何も予定がなければ仕事が気になってオフィスに来てしまう。それよりはシェアハウスの件やってた方が、気分転換になっていい。本来は、こういう小さな仕事に携わる弁護士、目指してたし」
「そうなんですか?」

 意外だ。だって雨宮先生は、企業法務の弁護士として活躍する姿があまりにしっくりきている。

「ああ」
「じゃあ、なぜ今の事務所に?」
「――それは――あ――もう行かないと」

 先生は急に立ち上がった。
 まずい質問をしてしまっただろうか。先生が急に緊張感をまとった気がした。

「土曜日、何時に行ったらいい?」
「九時でお願いします」

 最初の内見者が十時に来るから、その前に打ち合わせができたらいい。

「わかった。じゃ、その時に」

 そしてくるりと背を向けると、片手をあげ、行ってしまった。
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