彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
 そして迎えた土曜日。

 雨宮先生の姿を見て、私は驚いてしまった。

 休日だというのに、仕事と同じ、びしっとしたスーツ姿だったからだ。髪は自然な感じで下ろしていて、そこはいつもと違ってちょっと親しみやすい雰囲気が出ているけれど。

 私が目をぱちくりとさせたからだろう、先生は「何?」ときいた。

「ちょっと驚きました。だって先生、仕事仕様だから――」
「何だよ仕事仕様って」

 先生は「あはは」と笑った。その屈託のなさは、初めて見る感じだ。

「てっきり普段着でいらっしゃるのかと」
「なわけないだろ、内見者になめられる。あ、言っておくけど今日の俺は、野崎さんの顧問弁護士っていう設定だから。大家に顧問弁護士が付いているとなれば、住人もちゃんとしなくちゃって思うだろ。それと、野崎さんもジャケットくらい羽織った方がいい」

 先生はちらりと私の格好――白い七分丈のTシャツにライトグリーンのフレアスカート――を見ると、言った。

「そうだな――あれがいい。白いジャケット。前澤さんの代わりに残業してくれた時に着ていた。あと、髪も上げて」

 よく覚えているな。さすがの記憶力。

「わかりました」

 仕事にかけて、雨宮先生は超一流だ。そのアドバイスを無視することがどうしてできようか。私は素直に先生の言うことをきいて、身支度を整えた。
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